あまりよく知られていない葛の栄養価
夏の和菓子の定番といえば葛きりや葛もち。黒蜜やきな粉との相性抜群でもっちりとした歯ごたえがクセになりますよね。このコラムでは和菓子でよく使われる葛のあまりよく知られていない凄い栄養価について解説したいと思います。
古くから生薬として使われる葛
皆さんは葛根湯(かっこんとう)ならよくご存じですよね。風邪のひきはじめには葛根湯と言われるほど。実はこの葛根湯、漢字からもわかるように「葛」の他数種類の生薬が入っています。日本では昔から葛を食べたり生薬として使ったりなど、健康のための成分が凝縮された植物であるといえ、葉から茎、根まで全て無駄なく使えるコスパの良いスーパーフードだったのです。
身近な植物だった葛は日本人の健康を支えていた
葛は日本全国に生息するつる性の多年草でした。よって昔からわたしたちの生活で身近な植物として親しまれてきたのです。
和菓子の材料としてだけでなく、「葛湯」として体を温めたり、生薬として薬がわりにしたりなど、私たちの生活に欠かせない植物でした。精進料理としてよく使われる胡麻豆腐も実は葛から作られます。胡麻豆腐といえど大豆から作るのではなく、葛粉を水で練り上げて作るからあのもっちり感がでるのですね。山奥で修行をしていた僧侶たちが勤しんで作るほど葛は重宝されるものでした。
葛は海外からも注目されるスーパーフード
冷えたからだを温める発汗作用、血行促進作用など、葛にはからだの巡りをよくしてくれる大きな効能があります。その他内分泌系を助けたり、血管拡張や神経の安定、肝機能の向上、血圧の安定や動脈硬化予防など、健康成分が凝縮されています。
さらに今海外でも人気のあるマクロビオティックでは葛粉を多用されるため需要が高まっています。
「巡りをよくする」葛はデトックスにも
分かりやすくいえば、葛はからだの巡りをよくし停滞している部分を流すようにしてくれる。つまり不規則な生活や食べ過ぎ飲みすぎによってからだの中に蓄積した毒素を流してくれる効果もあるのでデトックスにも良いといわれています。
「葛粉と片栗粉」同じとろみでも効果は真逆
じゃがいものでんぷんから作られる片栗粉は、からだを冷やす性質を持つのに対し、マメ科の葛の根からできる葛粉のでんぷんはからだを温め、血行を促す性質があります。
ですから風邪のひきはじめに葛根湯が飲まれるのも、この葛のもつ発汗作用があるからなんですね。
葛と本葛ってどう違う?
和菓子にも様々な形で使われる葛ですが「本葛」は皆さんご存じですか?葛は日本では身近な植物であるものの、生産量が少なく高価であるために、一般的に葛粉と称して売られているものの多くはじゃがいもやさつまいもなどの他のでんぷんを混ぜて作られています。
本葛は他のでんぷんを混ぜない純粋に葛100%のものをさしますが、本葛の低価格競争が激化し、一部のものは他のでんぷんを混ぜているという場合もありますので本葛を買うときに注意してみてください。
本葛といえど他のでんぷんを混ぜているものと区別するために、奈良の吉野葛100%などと、産地表記も入れている場合もあります。
葛を使った代表的な和菓子
透明感のある涼しげな見た目とぷるぷるもちもちとした食感を楽しめる葛ですが、和菓子にはどんな種類があるでしょうか。ここで代表例を見てみましょう。
水菓子の代表ともいえる葛饅頭
葛粉を透明になるまで練り、こしあんを包んだ葛饅頭。これを桜の葉で巻いたものを葛桜(くずざくら)と呼びます。桜餅に使われる葉は同じ桜の葉を塩に漬けたものを使用しますが、葛桜に使う葉は塩漬けされていないので、食べずに見た目を楽しむのが目的です。
きな粉と黒蜜たっぷりかけたい葛餅
こちらも夏によく出回る和菓子で、四角く切ったものにきな粉や黒蜜をかけて食べます。関東では「久寿餅」をくず餅と呼んで白みがかった色をしたものがありますが、こちらは小麦のでんぷんを使用しており、葛餅とは別の和菓子です。どちらもおいしいですが、たまたま名前の読みが同じであったとは面白いですね。
見た目から涼しげな葛きり
ところてんのような透き通った見た目の美しさと喉ごしの良さが暑い夏にぴったり。葛は体を温めてくれるので、涼をとりつつ体を冷やしすぎない上品な和菓子です。
以上葛の代表的な和菓子を紹介しました。昔から暑い時期によく食べられていた葛は、汗をかいて健康的に夏を乗り切るための健康食品だったのですね。少し体力が落ちたな、疲れやすくなったな。と思った方、夏を乗り切るために葛パワーを取り入れてみませんか?