
上生菓子。それは和菓子の中の一ジャンルとしてだけではなく、お茶の席や行事の席などでも出される、伝統と格式のある「由緒正しい菓子」ともいえるでしょう。
上生菓子は「上菓子」「主菓子(おもがし)」とも呼ばれ、味は勿論のこと、芸術的なその佇まいはまさに【作品】です。
では、「普通の和菓子と上生菓子、具体的に何がどう違うの?」という方に、本日は上生菓子の基礎知識をご紹介していきましょう。
上生菓子とはなにか
上生菓子とは、そもそもどういったものでしょうか。単に、「高位で高級な生菓子」という解釈は間違っていません。が、しかし。上生菓子とは、それに使われる素材や製法だけで分類されるものではありません。
【とにかく高級な素材を使って作った菓子=上生菓子】
と、いうわけではないのです。ではどういったものかと言いますと、以下のような特徴が挙げられます。
・菓子にテーマがあり、そのテーマは「四季」「古典文学にちなんでいる/古典文学を引用している」
・上記のテーマに基づいて、テーマを表現するべく芸術性が高い
・「菓銘」がついている(菓銘について、詳しくは こちらの記事にてご紹介 )
では、それぞれについてもう少し深堀してみましょう。
上生菓子の特徴|その高い芸術性
上生菓子はどれもシルエットが美しく、その美しさは、四季の移り変わりや古典文学、俳句や和歌に通じるテーマ性によるものです。つまり、日本人の心、琴線に刺さる表現がされた菓子と言えますね。
上生菓子を作る職人の匠の技術とお茶の席で客人に対するもてなしの心と相まって、まさに上級の菓子となります。とはいえ、お茶の席に招待されたりや格式ある行事への参加という事は、そうそう多い機会ではありません。
その為、決してそのような場面だけではなく、ちょっとした贅沢として上生菓子を食し、楽しむことは現在では簡単にできます。そんな時、ぜひとも【テーマ】【菓銘】にも意識を向けてみてください。ただ美味しく美しいだけではなく、より一層深く上生菓子の世界観を楽しむことができるでしょう。
上生菓子の特徴|「菓銘」がついている
さきほどから多少触れていますが、上生菓子には「菓銘」が必ずつけられています。【銘】といえば、古来より日本になじみ深い「日本酒」や、他にも「日本刀」などでもよく見られるものです。単に「酒」や「刀」と呼ばず、特別な「名前」をつけることですね。いわゆる”シグネチャー”という表現のイメージです。
「菓銘」はその菓子のテーマにも直結していて、菓子そのもののカテゴリー名ではなく、意匠につけられた名前なのです。
ちなみに、「菓銘」は先ほども紹介したように【テーマにちなんだ名前】となるため、たとえばまったく同じ菓銘の菓子でも、それを作る職人/和菓子舗によって表現方法が違うので、見た目は様々に存在します。
定番の菓銘のひとつに”落葉”というものがありますが、その”落葉”のテーマに沿って色々なバリエーションが日本全国にある、という事です。見比べ&食べ比べをしてみるのも、一つの楽しみですね!
上生菓子の深い世界観を楽しんでみよう!
如何でしょうか。これまでに何気なく食べたことがある和菓子が「実は上生菓子だった!」と思い当たった方もいらっしゃるのでは?
上生菓子は、茶道や格式ある行事の場などから生まれたことで、元々は一般的には楽しむことが難しいものでした。上生菓子が私たちにも身近なものとなり始めたのは、江戸時代です。この頃に急速に和菓子を作る技術が発展したため、江戸や京都などの繁華街や街道町を中心に、庶民にも浸透して広まっていきました。おかげで今日では、私たちも気軽に楽しむことが出来るようになっています。
また、当サイト「しろあん」では、上生菓子を取り扱う店舗様情報も多数掲載しています!ぜひあわせてチェックしてみてくださいね!